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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
もし、そこがだめでも二、三ヵ寺はめあてもないではございません」
「たのむ」
「じゃあ、ここでお待ちくださいますか」
「待っておる」
「ちょっと、ひまはかかるかもしれませんが、先生、ここをうごいてはいけませんぜ」
「うごくまい」
「迷い子になると、てまえが捜すに苦労しますからね」と、大蔵はそこらの岩へ、牛の手綱をぐるぐるまわして、
「やい、てめえも、草でも喰べながら、おれのもどるまで、おとなしくここで待っているんだぞ」
と、いいきかせ、やがてすたすた瓦坂の方へ降りて行った。
しかしこれが何と、行ったきりで、待てどくらせど、なかなか帰って来なかったのだ。
時親は次第にいらつきはじめていた。おとといの晩のこともある。また酒か女にでもかまッているのであるまいか。下郎根性はぬけないものとみえる。きのう今日は、あんなに酒の上を悔やんで神妙ぶッて見せながら――と、すこぶる腹がたって来て、どうにもたまらないらしい渋面だった。
すると、案のほか。
忍ノ大蔵はいかにも懸命らしく、やがて坂下のほうに姿をみせた。そして、やや息ぜわしげに登って来ると、時親のまえに立って言った。
「どうも、お待ちどおさま。