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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

どうみても、今日の大蔵には酒の気はない。乱心でもない。しかも語気は、おとといの晩よりすさまじい。

時親は、かあっと、赫怒を、肩の息にあらわしてきた。

「下郎っ」

はったと、にらんで。

「わかった、きさまの豹変は、正成にたぶらかされたものだろう。ことば巧みに、正成に魅せられ、出世の夢でもみているか」

「言いなさんな。正成どのは、おまえさんのことなんざ、悪くもいわず、よくもいわずだ。ましてこの大蔵の去就などに目もくれてはいない。また千早には、大将から兵のはしまで、出世を考えているようなのは、ただのひとりもいねえンだよ。そんな娑婆ッ気で居たたまれる城じゃあない。そこらが、おまえさんの学じゃあ割りきれねえとこなんだろう」

「…………」

「だが、おれは見た。人間もほんとに信じあって一つにかたまると、こうも強く美しくなるもんかっていうことをね。人間を見直したよ。やくざな俺までがあの籠城には手をかしてやりたくなるんだ。千早の中へはいったのが身の因果か何かは知らぬが」

「それが正成の魔力だわ。這奴は、わしの兵学をも盗みおった。目をさませ、大蔵」

「ごめんだ。あっしは千早へ舞いもどる。