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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

「そうですか。阿新どのも、はや十六、七におなりですな」

「なにしろ、きかない子ですし、それによく小右京さまを訪うて来る菊王という者と、いつも血気なことばかり話しあっていたようですから」

「無理もありません。父ぎみやら俊基朝臣などの非業な死を、まのあたりに見た少年の御血気としては。……して今日は、小右京さまには?」

資朝の後家は、背にまとい付いている子の頬へ、頬ズリを与えるようにいた。

「小母さまはもうお帰りか。裏のお家へ行って見ていらっしゃい」

女童はすぐ庭向うの離れへ駈けて行ったが、やがてまた縁の外から、

「いない」

と、その幼顔を振っていた。

「……でも、じきにお帰りになりましょう」と、資朝の後家は、右馬介の方へ。「今朝ほど、双ヶ岡へ行くと仰っしゃって、早くにお出かけでしたから」

「ほ。双ヶ岡へ何のご用で?」

「ご存知でございましょうが。兼好法師という、おかしげなお人を」

「吉田山の法師ですか」

「そうですの。その吉田山も六波羅兵の陣場になってしまいましたので、先頃から双ヶ岡へ、庵を移しておられます。……小右京さまとは、いぜんからお親しい仲とみえ、ままここへもお顔を見せますし、小右京さまもお歌の詠草など持って、何かとよう行き来しておられまする」