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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

そして、いよいよみんな戦に出るのだとさ。みんな浜へ駈け出して行ったぞ。爺の刑部まで駈けて行ったぞ」

「えっ、ほんと」

「ほんとだとも」と、四股を踏んで「――的場の仲間まで、わし一人おいて、行ってしまったよ。右馬介、行ってみようよ」

「ま、お待ちなされませ。大蔵(鎌倉の邸)の御宗家からきたお使いならやがてここへ見えましょう。若ぎみがお迎えに出るなどはいけません。若ぎみはここのおん大将なのですから」

「右馬、わしもみなと一しょに弓を持って戦に行くのだ。藤夜叉は女だから行けないね」

そのとき、浜の方で貝の音が鳴り出していた。

郷党の野や家へ、集合を告げているのであろう。すでに七郷の足利党は、西に戦雲をながめ、ひがしに鎌倉の空を見て、

「令は、いつか」

と、出動を待ちぬいていたことだった。とくにこの地方は、足利家の穀倉でもある。営々と半農半武士の黒い汗と代をかさねて、武具や馬匹を蓄備してきた財源の地でもあり、すべては、

「今日のために」

と、言わずかたらずな誓いが、畑にも野にもみちていた郷である。

――やがて藤夜叉と右馬介とは、不知哉丸に引かれて、庭山の小高い所にのぼっていた。