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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

どっちから祝いに出むくこともあるまい」

「いや。これへ参ったのは、師直が一存にすぎず。なにとぞ、過ぐる日の無礼は水にお流しあって、師直が心ばかりな、とっさのお門祝いを、寸時、お酌み上げ願いとう存じまする」

ねばることでは、道誉はとうてい彼の比ではなかった。師直の主人高氏は、道誉をひどくニガ手としているが、師直は何らそうした風ではない。いつかの初対面のときからして、彼は彼を呑んでいた。

師直は急に、浜のなぎさの方を振りむいた。そしてこう大声で呼ばわった。

「おうい、なにしておるか。はようせんか、はよう」

さっきから浜には一そうの花見幕をめぐらした屋形船がついていたが、声とともに鳥籠のフタでもあけたように女たちがこぼれ出て来た。鎌倉一流の白拍子たちである。西施、小観音、おだまき、箱根、小槌、獅子丸などどれひとり道誉と馴じみ少ないものはない。わけて白拍子茶屋の白龍は極道な道誉をウラのウラまで知りつくしているおかみであった。彼女は師直にたのまれて、海上からこれへ来ていたものにちがいない。この脂粉軍の大将には道誉もかなわなかったものとみえた。

――やがて行軍の部下は砂丘のあたりで休息を命ぜられ、道誉もいつのまにか、彼女らのとりことなって、屋形船の内にいた。