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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
「はっ」
「子は二人か」
「さようです」
「幾つと、幾つ?」
「庶子竹若七歳と、実子千寿王と申す四歳がございまする」
「ほかには」
「…………」
高氏はやや間をおいてから、
「ございませぬ」
と、明答した。
すると高時は、ク、ク、クと噛みころし切れない笑いを白い歯にもらした。側近諸大名みな、緊張していた氷のような空気にひびいて、それは王者の彼の笑いとも聞えなかった。謁見ノ間の天井裏かどこかで、べつな妖しの物がふと奇声を立てたかとおもわれた。
「やい、高氏」
がぜん、高時の調子も、するどく変って来て。
「犬猫ではあるまいに、じぶんが産ませた子を忘れているやつがあろうか。……道誉から儂は聞いておる。そちにはもうひとりの男の子があるはずだ」
「あ、いや」
「ないというのか」
「まこと、よそには本年十一と相なる不知哉丸と申すのが、あるにはあるのでございますが」
「それみい!」
と、したり顔に。
「年順でいえば、しかも長男ではないか」
「が、仔細なございまして、庶子ともせず、家にも入れておりませぬ」
「どこにおいてあるのだ、その隠し子は」
高氏は冷たい肌を這う油のような汗を覚えた。あの道誉が、そもどんなことを高時の耳に入れていたのか。