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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
たえず、三河武者の訪れや早馬の到着を見、高氏のまわりには、もう軍事でない遠いさきの政略まで始まっている。
上野国の新田からも早馬の密使が来た。これはさきに鎌倉で別れた岩松吉致がもたらした何らかの諜し合せであったらしいが、高氏はその返答を、
「師直、書け」
と、師直に口述して、執筆させた。
また上方方面からの情報も、ひっきりなしにとどいた。六波羅のもよう、赤松勢の進退、千早金剛の戦況、伯耆大山以後の後醍醐軍のうごきなどまで、ほぼ、把握していた高氏だった。
「兄者、連判の用意がととのいました。子ノ刻集合の布令、よろしゅうございましょうか」
直義から念をおしてきた。
「よし」
との、ゆるしをえた直義は、師直からそのむねを、すぐおもなる将にふれさせた。
子ノ刻(深夜十二時)密々に柳堂の御本陣へあつまれという令である。何事かとみな顔をそろえた。
――場所は、日ごろ時宗の信徒が大勢寄って念仏講をするがらんとした大床の板かべ板じきで、阿弥陀像の壇にだけ、あかりが灯っていた。見ると壇には、足利家先祖の仮位牌と、またとくに、高氏の祖父にあたる七代の人――鑁阿寺に謎の置文をのこして憤死した――例の家時の位牌がべつにまつられていた。