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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

――美しい垂衣の女性が、一少年をつれて、柳堂の陣門をみちびかれ、直義の陣幕のうちへ入って行った、と――。

「おねがいがございまする」と、右馬介は言いつづけていた。

「――もし私の寸功でもおぼしめし下さるなら、それに代えて」

「なんだ、言ってみい」

「このさい、晴れて御父子のご対面を仰ぎとう存じまして」

「連れてきたのか、不知哉丸を」

「はいっ」

「たぶんそれであろうと思うていたよ。予感は中った」

「それとまた、もうお一ト方にも」

「藤夜叉にもだと?」

「なんのお迷いでしょうか。時節がきたら、父子の対面もしてやる、いつまで日蔭者ではおかぬ、藤夜叉もきっと高氏の室に入れてつかわすと、かつて鎌倉の小壺ノ浦で、殿はかたいお約束をつがえておいでなされます」

「責めるのか、右馬」

「いえ、さような儀ではございませぬが」

「忘れてはいない」

「ならば」

「まあ聞け。わしとてわが子の成人ぶりはみたい。まして不知哉丸は初めての子だ。したが何たる薄縁か」

「ぜひもございませぬ、今日までのご事情では」

「ところが、薄縁はなおどこまでも薄縁だ。道誉めの告げ口で、相模入道(高時)どのへ人質に上げねばならん。