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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

忠顕は言った。

「ご心配な者ではございません」

廉子は、いくらか警戒の眉を解いて。

「……では、みかどの綸旨をいただきたいと申して来た岩松とやらの使いですか」

「そうです。岩松経家の直書をもって、はるか四国の阿波からこれへ、ことばに絶する苦労をして、昨夜辿りついた者でござりまする」

「ならばよいが、ひょっと、番の武士にでも知られたら、一大事でしょうに」

「いえ。それも今は、心の知れている成田小三郎と名和悪四郎が柵の当番にござりますゆえ、夕の交代時までは、まず懸念はありません。……してなにか、みかどの御用でも」

「お薬湯が切れたのです。いつぞや土屋が送ってくれた薬種のうちの黄袋はもうありませぬか」

「あれはさしあげただけですが、もし何でしたら、成田に申しつけて、甲ノ尾の館へ求めにやらせましょうか」

「いえ、余人の手をへたお薬などは、めったにお口にもなされませぬ。……それに、昨夜はしとどなお汗をかいて、お熱はさがっておられますし」

それでか。廉子も寝不足のような皮膚をしていた。

まだ二月の寒さなのに、後醍醐にはさき頃、この破れ屋根の内陣にすわって、二七日の祈願をこめられ、そのムリな勤行のため、おかぜを引きこんだものだった。