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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
いまさら能登にだけ隠してみても始まらない。
だから何もかも、ご観念の上ではあった。
さりながらその観念なるものも、生死一髪の秒間ならまだしやすいが、明けても暮れても静かな起居のあいだに、持続していることは後醍醐ならずともむずかしい。
言明どおり、能登は朝に夕に、いや時刻さだめず、黒木の御所を見廻りにくる。時にはわざとらしく「……エヘン」と咳払いなどして通った。
能登は四六時中、ひとり胸の中でつぶやいていた。「……造作はない、檻の獅子だ、手をくだそうと思えばもういつでもやれる」と。
彼の大太刀は、丘上の黒木の御所を仰ぐたび、鞘のうちで夜泣きしていた。
「恩賞には」
と、枕についても考える。
「――恩賞には、いったい、どれほどな領土を幕府はおれにくれるだろうか」
これについては、判官ノ清高も鎌倉の確約を取っていたわけではない。「北条幕府への忠節」というだけのものである。
「清高も青くさい。なぜ、出雲、伯耆で何郡をくれるぐらいな言質をとっておかないのか。……帝は殺害まいらせて候う、と注進におよんだあとのはなしでは分が悪い」
しかし、彼は、
「幕府のことだ、まさかけちなまねは」