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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
垣根は、茂った葉で、一度跨ぐと、裾がぐしょぐしょになった。父子が、雨に打たれながら、二三度往復した時
「開けろっ」
表が、けたたましく叩かれた。八郎太が、縁側から
「深雪、早くっ」
と、叫んだ。深雪は、周章てて垣根に袖を引っかけながら、入って来た。
「たわけ者が又うせおった」
と、自分も、着物の濡れたのを拭きながら、裾を、肩を気にしている娘に、小太郎に
「わしらのすることは、これからじゃで、今、何をされても、手出しをしてはならぬ」
そう云って、小太郎を見た。小太郎は
「よくわかっております」
戸が、苦しそうに、軋り音を立てた。御家の邸内で、厳しい用心がしてないから、すぐ、閂が外れたらしく、土間へ棒の転がる音がした。
「仙波っ――仙波」
誰も、答えなかった。どかどかと、踏み込んで来る足音がした。玄関の襖が開いた。廊下が轟いた。次の間へ来た。襖が開かれた。
もう、暮れかかっていて、部屋の中は、夜色が沈んでいた。庭の植込みは、すっかり暗くて、牡丹の花だけが、白く、だが、雨にうなだれていた。
襖の後方いっぱいに、足軽が、小者が――そして、水の溢れるように、襖から入って来て、その両側へ、溢れ出て来た。