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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

線上閱讀佐々木 味津三《旗本退屈男(はたもとたいくつおとこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 頁

青空文庫

た。

さればこそ退屈男は、屋敷を出てから女装の京弥とは二三丁もわざと距離をおいて、どこで十吉がかいま見た時でも、あく迄京弥がひとり歩きであるかのごとくに見せかけるべく、権之兵衛とふたり離れ離れにあとを追いました。

道は先ず両国橋から人形町へぬけ、あれを小伝馬町から本石町に廻り、さらにまた日本橋へ下って、それから京橋、尾張町と人出の多そうなところを辿りながら、ずっと更に南迄のして、芝神明前迄いったときがかれこれもう四ツ前――即ち今の時刻にして丁度九時半頃です。

しかし、折角の囮もその夜はいささか徒労でした。通りすがりに京弥を見かけながら、「ちえッ。ぞっとするような別嬪じゃねえかよ。男一匹と生れたからにゃ、たったひと晩でいいから、あんなのとなにしてみていな」

「そうよな。お嬢さんにしちゃひとり歩きのところが、存外とこりゃ乙な筋合いかも知れねえぞ」

なぞと声高にしつつ、行きすぎたいくたりかのざれ男共はありましたが、肝腎の百化け十吉らしい者に出会わなかったことは、いかにも残念と言うべきでした。

然るにその翌あさでした。

「御前! 実に太い奴ではござりませぬか。