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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

線上閱讀佐々木 味津三《旗本退屈男(はたもとたいくつおとこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 頁

青空文庫

一四

声もなくうなだれて、黙々と打ち沈んだままでした。

引き替えて主水之介のほがらかさ。

「お介添、いろいろと御苦労でござった。そなたも同じ旗本、とかく旗本は大たわけ者に限りますのう。骨が硬うて困るとの仰せじゃ。飴でも煎じて飲みましょうぞい。――お坊主! 早乙女主水之介罷りかえる。御案内下されい」

サッ、サッと、袴の衣ずれが夜の大廊下にひびいて爽やかでした。

一四

表はもう四ツ近かった。

暗い。

大江戸は、目路の限り、黒い布をひろげたような濃い闇です。

「供! 主水之介じゃ。供の者はおらぬか」

「あッ。おかえり遊ばしませ。よく、御無事でござりましたなあ」

「眉間の傷はのう。お城へ参っても有難い守り札じゃ。上様はいつもながらの御名君、先ず先ず腹も切らずに済んだというものじゃ。ゆっくりゆけい」

「お胸前は?」

「まだ馬鹿者が迷うて出ぬとも限らぬ。そのままつけて行けい」

下乗橋からゆったり乗って、さしかかったのが常盤橋御門、ぬけると道は愈々暗い。

お濠を越えて吹き渡る夜風がふわり、ふわりと柳の糸をそよがせながら、なぜともなしに鬼気身に迫るようでした。

濠について街のかなたへ曲ろうとしたとき、不意です。