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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁
といったような人物であるらしかった。師匠の団十郎もそれがために往々傲慢の誤解をまねいたが、彼もやはりその轍を踏んでいたのであろう。そうして一面には頗る覇気に富んでいたらしく、一種精悍の気がその風貌に漲っていた。かれは文学の素養もあって、その当時の海軍大尉小笠原長生子の眷顧をうけ、その紹介で『木枯』という小説の単行本を春陽堂から出版したこともあった。かれは書画にも巧みであったと聞いている。俳優としての素養としては、舞踊が群をぬいていた。
かれはその後半年ほども歌舞伎座に出勤をつづけていて、前に記したように二十八年の一月から赤坂の演伎座に出演することになったのであるが、その前後からその眼病は再び不良にむかって来て、かれは片眼をつつまないでは舞台へ出られなくなった。かれは病める眼の上に白い切れをあてて、その両端の紐を左右の耳にかけていた。わたしはその病気の性質を知らないが、その頃は単に眼病というばかりでなく、その健康も著るしく傷つけられているらしかった。それでも舞台の上ではちっともその活気を減じないで、第一回興行の「関の扉」の関兵衛などは、かれの高慢に多少の反感をいだいている新聞劇評家も、みな讃嘆の辞をおしまないくらいであった。