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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁

青空文庫

相手になる者も困った。その欠点が中年以後ますます甚だしく暴露されて来たので、明治以後の新作物については彼は殆んど無用の人となってしまった。台詞廻しにも締りが無くて、いたずらにパアパア言うばかりで、家橘の鳩ポッポ、芝翫のパアパア、これらは悪い台詞まわしの見本のように言われていた。それでも家橘の台詞には一種の強い底力があったが、芝翫のは唯パアパア散るばかりで一向に捉えどころがなかった。この弊は晩年になっていよいよ耳立って来たので、かたがたかれは新作には向かない俳優と相場をきめられたのである。

こう列べ立てると、かれは何だか取得のない俳優のように思われるであろうが、なかなかそうでない。それをわたしがこれから語ろうとするのである。前置きだけを読んで、むやみに彼を侮ってはいけない。

わたしが初めて中村芝翫という俳優を舞台の上で見たのは、明治十六年の十月、わたしが十二歳の秋であった。その以前にも見たことがあるはずであるが、はっきりとした記憶が残っていないから、まずこの時を以て最初として置く。そのときの狂言は一番目が「妹背山」の吉野川、道行、御殿、中幕が「矢口渡」