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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁

青空文庫

無用の捨役は当然廃止された。これは番附の一進歩である。その方がたしかに便利であるので、他の劇場もおいおいにその例に倣うことになって、番附の体裁はすべて昔と変わった。そうして、震災当時まで三十余年を経て来たのであるが、震災以後それがまたいつか廃止されて、今日では薄っぺらな西洋紙に粗悪な印刷を施した、見るからに安っぽいプログラム式の物になってしまった。進歩か退歩か、外国流か、いずれにしても番附の一変化である。

さて、こうなって来ると、便利とか不便利とかいうことを第二として、われわれのように旧東京育ちの人間には、むかしの番附というものがおのずと懐かしくもなって来る。むかしの番附――殊に歌舞伎座以前の番附は特に上等というべき物ではない、中にはずいぶん粗悪な日本紙を用いていたのもあって、木版の印刷の加減で一種のいやな匂いを放つのもあった。しかも番附の匂うときには、その芝居はきっと大当りであるなどという伝説もあって、芝居好きの人々は新しい番附の墨の匂いを喜んで嗅いだものである。こんな馬鹿馬鹿しいことは、殆んど今の若い人たちには想像も付くまい。

式亭三馬の「客者評判記」