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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁
「さァ……」
改めてわたしはその人の毒のない眼をみた。「中川さんでしたかしら?」
「そうで、中川で……」
かつてそれはわたしの育った町内に久しく住んでいたいまの「中清」の若主人だった。十四五時分の遊び友だちの一人だった。
「お宅の火の見で、凧を上げたことと、おまつりの日にお宅の樽神輿をかついだことだけはいまでもよくおぼえております。」
わたしの訊いた親御さんたちの消息にこたえたあと中川君はいんぎんにそういった。
「わたくし、井原です。」
突然また一人の若い人がわたしのまえに立った。――伝法院横町の金物屋の井原君だった、――この人の姉さんとわたしは同級だった。
「吉田も来ています、直ちゃんも。」そういって井原君は窓のそばにいた一人の青年をさしまねいた。「おい、直ちゃん……」
だれか知ろう、その青年を、端正な眉目の、やや憂鬱な感じをもった近代的の好青年を往年の「浅倉屋」の直ちゃんと。――わたしの知っている直ちゃんは、クリクリとふとった、みるから健康そうな、浅黄の兵児帯に白い油やさんをかけたいたずらッ子だった。
やがて会は発起人代表の勅使河原区会議員の開会の辞によってはじまった。