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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁
すなわち、ある教室のまどからはその隅田川の水の匂にそまった空がみえ、ある教室のまどからはまた、浅草寺の、当のその観音さまの大きな屋根をはじめとして、仁王門の一部だの、五重の塔の半身だの、そして群立つ雲のごとく、ほしいままに、それらをつつんで悔ゆるさまなく茂った境内の大きな木々の梢だのが、往来一つをへだてたかなたに、手にとるようにみえたのである。
しかもその、三社さまのおまつりの来たときのその木々の梢の――みよ、わきたつ若葉のそのいろの目眩めくばかりの美しさ!
そこにも水の匂は立迷った。
……三社さまのおまつりにつづいて、すぐ、わたくしのまえにお富士さまが来た。
お富士さまとは?
これよりしてお馬返しや羽織不二
と、抱一の句にある江戸浅間祭の名残である。……赤い舌を出した麦藁の蛇をひさぐので知られている。
町は象潟町、その浅間神社あればの俚俗富士横町のその往来、いまは広くなったが、嘗ては、幅、九尺ほどの、地道な、それだけに陰気な、それよりも一番にせせッこましい感じがさきへ立つ一本道の、その南側に、簪だの、鬼灯だの、太白飴だの、葡萄餅だの、竹かんろだの、あやめ団子だの……そうした果かない、こまこました、縁日々々した露店が透きなくならんだのである。