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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁

青空文庫

そしてその間々に、星もやどれと、涼しく、なみなみと水をみたした金魚屋の幾つもの荷だの、それを避けて、わざと、暗くかがんだ虫屋の市松しょうじだのが。……そして、しのぶについた風鈴の、ときどきおもいだしたように連れ鳴るのをよそに、植木屋はまた植木屋だけ一トたむろ、カンテラの火のなびくまにまに、薔薇、百合、常夏、露それぞれのふぜいの鉢を、人波の中に、ここぞとばかりならべ立てたのである……

が、わたくしは、お富士さまといえば、いまでも鉋っ屑細工の、絵の具を塗り、中にひょうそくのあかりをともすあの燈籠をおもい出す。……そのあかりのいろの、赤あるいは青。……お富士さまのもつ夏の夜のかなしみは、じつに、そのかりそめの赤い色、青い色のあじきなさに尽きたといいたい……

お富士さまがすむと、今度は、観音さまの四万六千日である。

七月の十日……

盆まえのこの暑さ……ことしの暑さの、序びらきをみよとばかりに晴れぬいた空……

ふるるもののすべてを、染めあげなければやまない真っ青な空……

水の匂のいよいよ濃くなりまさった空……

その空の下に立つ鬼灯市の、せんなり鬼灯、丹波鬼灯の束を、かけ稲のようにかけつらねた店で境内はうずめられた。