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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁
源水横町の提燈やのまえに焼鳥の露店も見出せなければ、大風呂横町の、宿屋の角の空にそそり立った火の見梯子も見出せなくなった。――勿論、そこに、三十年はさておき、十年まえ、五年まえの面影をさし示す何ものもわたしは持たなくなった。「渋屋」は「ペイント塗工」に、「一ぜんめし」は「和洋食堂」に、「御膳しるこ」は「アイスクリーム、曹達水」に、おのおのその看板を塗りかえたいま。――そういっても、カフェエ、バア、喫茶店の油断なく立並んだことよ。”
このうち、いまみて説明の足りなかったと思うのは、“人道と車道境界の細い溝”のことである。“溝”といっても、べつに水が流れていたわけではなく、幅にしても一尺足らずの、石の縁をもったものだった。“大風呂横町の宿屋の角”とあるその宿屋は“浅草館”という大きな諸国定宿で、後年、ぼくは、「さざめ雪」という小説を書いたとき、そして、また、「ゆく年」という戯曲を書いたとき、この店のもつ環境と、この店に属する人たちの生活とを、勝手にぼくの空想のなかに動かしたことを白状しよう。……“勿論、そこに、三十年はさておき、十年まえ、五年まえの面影をさえ……”といったのについては、その四年まえ、大正十二年の関東大震災がもたらしたむざんさを、それといわずに歎いているので、人こそ知らね、いま読むと、ぼくには