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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁

青空文庫

そうした店々の外に、その町には、並木亭、大金亭という、二けんの寄席があった。東京でも有数ないろもの席で、一方に“柳派”がかかるときには、一方には“三遊派”がかかり、一方に“三遊派”のかかるときには、一方には“柳派”がかかるといったしくみになっていた。……ぼくは、この二けんがあったおかげで、中学生の時分から、円喬、円右、三代目小さんの落語を、柴朝の新内を、式多津、歌子の、“東西、これより浮世ぶしをお聞きに入れます”の浮世ぶしを聴くことができたのである。……竹ス、米あらい、四丁目、そうした下座のはやしの音が、いかにぼくの少年の日の夢をはぐくんでくれたことか。……浅草に生れなかったら、ぼくは、文学を一生の道づれにはしなかったろう……

しかし、何年、何十年かの後、銀行、会社の建物で、完全にこの町の埋めつくされたとき、その町の底からきこえて来る声は、遠山の、講釈もどきのお家騒動のはなしでもなければ、よか楼の、田圃の太夫こと沢村源之助だの、“スバル”派の詩人たちだのに百夜がよいをさせた女たちのうわさでもなく、ずッとそれより近世になってからの、明治製菓の売店に起った殺人事件についてだろう……