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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁

青空文庫

市、冬はこの酉の市と年の市とをどんな事ででもあるように、その日の近づくのをそれぞれたのしみにしたものである)あるいは親たちと、あるいは店のものたちと、やや長じては友だち同士、必ずわたしたちはその人込のなかへもまれに行った。だからそのことは、わりとはッきりした印象をわたしたちは残している。――それだけわたしたちにすると、大鷲神社の境内ほどのことはなくっても、とても仲の町、押しッ返されないまでもたやすく通り切れることではあるまいとおぞくもそう思ったのである。――いいえ、「張見世」だの「積夜具」だのといったもののあった時代のことをおぞくもわたしたちはおもい浮べていたのである。

折からの御大典奉祝、廓の中にはどこにも紅白の布で巻いたはしらが立ち、花暖簾といった感じの、天地を紅と浅黄とで染めた鶴と亀との模様の幕が張りまわされ、そのうえに提燈の火があかるく照りはえていた。そうして仲の町には、市松の油障子、雪洞、青竹の手摺。――丹精を凝らした菊の花壇が出来ていた。――が、いえば三々五々、何の混雑もみせずおもいおもいのしずかな歩みを運んで行く人影は、それぞれの人かげは、あまりにその華やいだ光景を裏打しなさすぎた。