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しゅくず

現代日本文学館8 徳田秋声

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁

青空文庫

には、彼も父をてこずらせた青年の一人で、パンや菓子の研究にアメリカへやられ、青年期をそこに過ごしたので、道楽仕事にも興味があり、大正の末期には、多摩川に大規模の享楽機関を造り、一号格の向島の女にそれをやらせていた。

銀子もためになるお客だから、せいぜいお勤めなさいなぞと、福井楼が出していたある出先の女将に言い含められ、春よしのお神から聞いて、若林のあることも薄々承知の上で出され、すでに三四回も座敷を勤めていたが、そのたびに多分の小遣いも貰い、そうそうは若林に強請りにくい場合の埋合せにしていた。永瀬の今まで手がけたのは、大抵養女か、分けのれっきとした芸者で、丸同然の七三などは銀子が初めなので、格別の面白味もない代りに座敷ぶりも神妙で、外国の話をして聞かせても、一応通じるような感じがあり、何か心を惹かれた。彼は手触りが柔らかく、

「晴子さんは一体いくら前借があるのかね。」

とか、

「貴女の希望は何だか言ってごらん。」

とか、探りを入れてみるのであった。

永瀬はこの土地で呼ぶばかりでなく、時には神楽坂へもつれて行き、毘沙門横丁の行きつけの家で、山手の異った雰囲気のなかに、彼女を置いてみたり、ある時は向島の一号である年増の家へも連れて行き、彼女を馴染ませてみようともした。