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しゅくず

現代日本文学館8 徳田秋声

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁

青空文庫

二十二

そんな心持は庸三が最初葉子の田舎へ招かれた時にも、彼女の母たちにはあった。そして庸三の出方一つで母方の叔父が話しを決めに来るはずであった。しかし庸三の気持はそこまで進んでいないのであった。今庸三がその気になったのは、長いあいだの痴情の惰性で、利害を判別する理性の目が曇ったからでもあったが、恋愛の惨めな頽勢を多少なりとも世間的に持ち直そうとする愚かな虚栄と意地からであった。

「先生が亡くなっても、私がさっそく困らないように心配していただけるのでしたら、叔父も賛成してくれますわ。」

葉子は言うのだったが、庸三も三つの書店から来る印税の一番小額な分の残額くらいは、それに当てておいてもいいと思った。

そのころ葉子は子供が海岸に行っている間を、庸三の古い六畳の方を居間にして、プルウストやコレットの翻訳などを読み耽けり、その隙にはわが家のように部屋を掃除したり、庭石や燈籠に水を打ったりして、楽しげな毎日を送っていたが、子供たちが海岸から帰って来ると彼女の気分もがらりと変わるのだった。

庸三はこの結婚に必ずしも自信がもてると思ったわけでもなく、いずれは若い配偶者のもとに落ち着かなければならない彼女だとは思っていた。