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しゅくず

現代日本文学館8 徳田秋声

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁

青空文庫

」

「そう、じゃすぐ行くわ。」

葉子は庸三の傍へ返ってその通りを告げた。

「ひょっとしたら少し手間取るかも知れないのよ。だけど私を信じていてね。」

葉子は湯島に宿を取っている松川を見ると、いきなり飛びついて来る彼に唇を出した。松川は洋服も脱がずにいたが、田端で別れたころから見ると、身綺麗にしていた。彼は今顧問弁護士をしていた会社の金を三万円拐帯して、留守中の家族と乾分の手当や、のっぴきならない負債の始末をして、一旗揚げるつもりで上海へ走るところであった。当分潜っていて、足場が出来次第後妻や子供たちを呼び寄せることになっていた。葉子は涙ぐんだ。

「これは絶対秘密だよ。不自由してるだろうから、貴女にあげようと思って……これだけあれば当分勉強ができるだろう。」

松川はそう言って、ポケットの札束から大札十枚だけを数えて渡した。送らせて来た書生が席を外していたので、二人はいつも媾曳している恋人同志のように話し合った。

「あの先生も君を好きだろう。始終傍にいるのかい。」

「ううん……それに先生はお年召していらっしゃるから。」

日の暮れ方になって、葉子は別れて来たが、外へ出てからも涙がちょっとは乾かなかった。