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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《現代日本文学館8 徳田秋声(しゅくず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 頁
三十
それにたといそれがどんな家庭であるにしても、葉子をおくのに相応しいものではなかった。彼女の逃げようとしているものは、いつも求めていたものであった。望みはそう大きいものでも高いものでもないながらに、手に取った瞬間現実のいやな匂いが鼻につくのだった。彼女には自身を支える骨格がなかった。
「清川さん私を愛していたのかしら。それとも愛していなかったのかしら。」
その言葉はちょうど庸三とは反対に、愛に狎れた彼女の乱舞を許さない清川の理智的であることを証明しているようなものだが、葉子の異性としての清川への愛情の尺度でもあった。
「あの人は兄にも言ったそうですの、葉子と一緒にいたんじゃ勉強ができないって。」
葉子は見えも外見もなく、擽ったそうに苦笑するのだったが、そうなると彼女も清川によって、無慚に路傍に叩きされた花束のようなものであった。
三十
三丁目のアパートは、震災後その辺に出来た最初のアパートであった。この都会は今なお復興の途上にあったが、しかし新装の町並みはあらかた外貌を整えて来た。巌丈一方の鉄筋コンクリイトのアパアトも、一階に売薬店があり、地坪は狭いが、四階の上には見晴らしのいい露台もあって、二階と三階に四つか五つずつある畳敷きの部屋も、床の間や袋戸棚も中へくり取ってあり、美しい装飾が施されてあった。