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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

……これまで、そのような御持病があるとは聞いたこともなかったに」

ここの準備はできていた。いつでも出勢できるように、馬寄せ場から兵営全部が、ひたすら勢揃いの日を待機しており、いまはいささか待ちしびれの惰気すら生じそうだった。

「おう、右衛門ノ佐さま」

「瓜生保か。どこへ」

「千種殿まで、例の軍状の御加判を願いに行てまいりました」

「おられたか」

「は」

「発向の遅延についても、なんぞ仰せがあったろう」

「さて、困ったものよと、お喞ちを洩らされ、ひとつ、佐殿からでもいうてもらうしかあるまいかなどと、お焦立ちのていにござりました」

「わしから何を」

「ご意見を」

「たれへ」

「おそれながら」

「兄者へか」

「さようでしかござりますまい。そのへん、よくは存じませぬが」

右衛門ノ佐義助は、ちらと顔いろを変えた。――このごろ彼の耳へも入っていたことがある。

勾当ノ内侍の噂だ。

兄が、なかなか腰をあげないのは、内侍の愛に溺れているのだ……という京雀のもっぱらな取り沙汰なのだ。

義助は馬鹿ナと笑っていた。けれど千種忠顕までが、そう考えているとしたら、あるいはほんとなのかもしれない。しかりとせば、言語道断である。