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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

当然、それらは敵の重囲に陥ちて、ふたたび帰ることない被殲滅者とは察しられながら、貝の音は、子をさがす母のように、いつまでも、あきらめきれぬその呼び貝を、夜の野に、吹いていた。

「……ちと、意外」

と、尊氏は引き揚げてきた諸将を周囲に見て言った。

その夕、最前線にあったのは。

頭ノ殿、と人の呼ぶ尊氏の弟、左兵衛頭直義をはじめ。

曾我上野介師資

南遠江守

宇都宮弾正大弼

仁木義長

千葉大隅守

高ノ越後守師泰

などだったが二、三帰らぬ顔もあった。

それにせよ我の十倍以上にものぼる敵が、なんで脆くもついえたのか、尊氏は、諸将から聞きとった戦況を按じて、たやすく勝ちに驕れなかった。

「……察するに、今日の烈風、敵も利ならずと考えて、決戦はあしたにと、俄に一時、退軍をみせたのであろう」

と、引き緊めて。

「油断はならぬ。明日こそは、われらの一期だ。まずは酒に体でもあたため、こよいは充分に身を養っておけ」

と、野戦食を喰べながら評議にかかった。

風は、夜半ごろから小やみを示している。――一睡をとって、やがて起つと、諸将は、名島から松ヶ崎そのほか諸所の高地にかがりを焚き、また無数の旗じるしを、木々の枝にまでつけて、偽陣の態を作った。