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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

正成ほどな徳のあるひとすらかくの如しである。……現に、なんらの恩怨なく、憎しみ合ってもいぬ正成とさえ、この決闘を否みなくさせられたではないか。……ああ、武門、ああ、さむらい。右馬介は、正直、つらいお使いをうけたまわったものかなと思った。いつになく気がみだれた。

あくる日である。まだ暗い未明のうち、彼は、ひそかに河内へ立った。

首桶の内の物は、夏なのでくさらぬように、前夜、細心なふせぎをほどこし、それは馬の前輪に結いつけて、あじろ笠、法衣姿の馬の背だった。あたまは、きれいに剃髪しており、それもこんどは、仮でなく、真光寺の内で得度をうけていたのである。

「……はからずも、蓮生坊のこころがわかった」

彼は、道すがら、つぶやいた。遠いむかしの、熊谷蓮生坊の発心と、その生涯も、きわめて自然に考えられる。だが彼には、心のあてとする法然の門はなかった。さしあたってのつらいお使いをすませたあとの身の処置はどうしたものか、そこはまだ考えてもいなかった。

おなじ日、尊氏は、兵庫の全軍を再編成して、魚見堂を立ち、いよいよ、都へむかって進発していた。直義とは、山崎でおちあった。