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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

しかるに」

と、貞満はついに、男泣きに、声をのんで、咽んでしまった。

貞満は、また、

「し、しかるにです」

と、涙を払って。

「いまさら敵に降参とあっては、死せる万骨にたいしても、われら、生きてはいられません。かつまた一徹な部下ども、荒くれども、これらも、何をしでかすか、自暴の極には分りませぬぞ」

「あいや、貞満」

頭ノ中将行房が、大床の端から諭した。

「心得ちがいいたすな。還幸は決して、御降伏ではないのだ」

「ばかな、仰せを」

それが、かえってまた、彼の忿怒を煽ったもののように。

「いかなる名分にせよ、大元帥たる御方が、その行宮を捨て給うて、敵手に、あとの御運をゆだねられるからには、降参ときまッている!」

「いや、至尊として、臣下の尊氏に、御降伏などというすじみちはない」

「さようなお考えは、あなた方だけのもの。武家世上では、そんな旧念など通用いたしません。まことまた、降伏なのだ。かくまで、一同身命をすてて戦いながら、なお戦いが振わぬのは、帰するところ、帝徳の欠如か。輔弼の悪さでおざるまいか」

「だまれっ、陪臣の身をもって、あまりと申せば、僭上な」

「いいや、貞満はいま、全官軍の兵に代って物申しているのです。