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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

「みな、大儀でしたね」

廉子は、女将軍のように、ここで言った。

その威儀に、

「はっ」

と、名和悪四郎以下みな、ひざまずかずにいられなかった。

頭を見わたして、

「みかどは、ご無事でいらせられましょうね」

「は。万端の用意がととのうまで、小迎と申す浦の、一味の者の家にて、お待合わせのはずでございまする」

「それ聞いて安心しました。知夫の港とやらへは」

「あといくらもございませぬ」

「そう……」と、さすがほっと黛を夜空に憩わせた。星ばかりである。遠くには別府の火の手が海風にあおられているのが見えた。

「三位さま」

武士の一名は、彼女の足もとへかがまって、わが背をすすめた。

「お疲れでしょう。どうぞおつかまり下さい。韋駄天といそぎまする」

「いいえ」目もくれず――「千種どの(忠顕)一条どの(行房)行きましょうか」

「なお、おひろいで?」

「みかどのご苦労を思えばなんでもありません。それよりは、すぐここへ、柵の兵が追っかけて来ましょうぞ。それはよいかの」

「こころえました」

と、名和悪四郎が起って答えた。

「そのための殿軍には、われらがおります。後には一切お案じなく」

浦の代官屋敷をはじめ、別府じゅうは一刻、叫喚に煙っていた。