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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
せつな、異様な水音を下に聞いたし、白い水玉をもかぶったので、彼女はわれを忘れて、そこに茫然と棒立ちになっていた金若の影へむかい、
「童ッ。何をしやったっ」
と、狂気したようにむしゃぶりついた。
「…………」
よほど昂奮しているらしい金若は、夢みる唖みたいな硬ばッた顔を、権大ノ局が夢中で打つにまかせ、また局の身は、うしろから、廉子に抱きとめられていた。
「ま。かわいそうな。金若の科ではない。わらわはこの眼で見ていました。小宰相は過って落ちたのじゃ。金若が手を伸ばしたのも間にあわずに」
そのとき、味方同士ぶつかったのか、船は裂けるような響きをたてた。
追捕の舟軍は、一とき、夜の海を不知火にして迫っていた。そのうちの二、三ぞうは、つい矢ごろの距離にまで追ッついて来たほどである。
けれど、終始、
「大丈夫です」
と、岩松吉致が予言していたとおりなものが、ほどなく敵の脚いろに見え出していた。――次第にその舟影は遠ざかり、不知火の一ツ一ツは算をみだして消え果てた。あとはまったく元どおりな海しじまだった。
が、その夜半ごろまでも、帝の親船以下、みな漂いをつづけていた。