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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

長年は大床から退がるとすぐ、末子の竹万丸を一室へよびよせていた。

「竹万、いまからすぐ大山の叔父御の許へ急いで行け」

「お手紙でも持ちますか」

「筆をとる暇もない。たった今、そちも勅使のお旨をみなと一しょに伺っていたであろうが」

「はっ」

「あの通りを、叔父さまの信濃坊源盛につたえればよいのだ。源盛もこんな急とは思いもよるまい。……だから麓へ下って来るにはおよばん、ただ船上山の方の手配をすぐたのむと、この父に代って申せ。そしておまえも叔父さまの手に付いて、ここは一生の働きどころと思うて働け」

竹万丸は、ことし元服をひかえている十五歳だった。

だいじな連絡にこんな乙子を用いたのは、少年の一途と敏捷のほうが、なまじな者よりは安心とした長年の考えだったものだろう。――須臾にして、小鳥のような竹万丸の姿は、名和から東南へ三里ほどの大山の霞のうちへかくれていた。

ここで寸言すれば。

名和ノ庄の大地主、名和又太郎長年の“長年”という名のりは、あとで後醍醐帝から賜わったものである。このときはまだ“長高”といっていた。

が便宜上、長年を使ってゆく。

それと「伯耆巻」「船上記」