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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

公卿は、後醍醐の乳父、吉田大納言定房だった。

いや、そういうよりも、正中ノ変の寸前に、宮中の陰謀を、幕府へ密告した公卿といった方が、いまではたれにでも分りがいい。

宮方の“裏切り公卿”としてである。――この鎌倉で、まっさきに、宮方の張本として首斬られた日野俊基などは、

「いちど吉田一品の腹をきかねば、死にきれぬ。側近第一の卿が、なんで、みかど以下、われら同志のものを、蹴おとしたか」

と、死すまで、恨んでいたほどである。

あまつさえ、笠置のあとも、吉田大納言定房だけは、恬として、新朝廷に仕えていた。

およそ以前は、後醍醐の朝に、ひとつであった公卿すべてが、流竄、断罪に処せられぬはない中で、どうしてか彼だけは、新しい光厳帝にまみえ、花園院にも出入りして、洒ア洒アと、こう生きながらえていたのである。

「その、辱知らずが」

と、鎌倉武士にしてからが、彼を、蔑侮の眼で迎え、

「……何を、また?」

と、高時との会見にも、要心をおこたらなかったが、しかし会見は、定房ののぞみで、人交ぜもせず、石庭ノ亭の一室でおこなわれた。

「ほ。……これはまた、大納言どのには、いたく老い込まれたご容子じゃな。