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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

で、その馬が欲しさに、つい私までも駈けくだり、馬を射止めて帰ったわけでございまする」

「馬の屍を」

「はい。肉をほぐし、塩漬けとして、兵糧の足しにしようというのです。――なにせい、弓はあっても、矢ダネは尽きて、弓も泣いている始末。――多少の線は冒しても、敵方の給与を少々こちらへも廻してもらうしかありません。どうか今日のところはお見のがしを。……はははは」

正季の冗談まじりな弁解には、正成もかえって、じんと瞼を熱くしたような面もちだった。

「それもそうか」

と、うなずき、

「は、は、は、は」

と、共に笑った。

そういう考え方は正成もしたことがある。

一例だが、寄手の猛攻が昼夜もなかった一ト頃には、よく藁人形を用いて、敵の矢を稼ぎ取ッたものだった。

無数のワラ人形を作って、武者姿に似せ、それを夜のうちに崖の“勝負ノ壇”やら随所の足場に立てておく。

山の朝まだきは、狭霧が多いので、敵はワラ人形と知らず、射浴びせてくる。――これでどれほど矢ダネを稼いだかしれないのである。折れ矢まで拾ッてその矢ジリを生篠にスゲ替えて使っていたほどだから、ワラ人形の軍功も生ける人間並だった。