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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

すると、井の辺りで、喰べられる雑草を選りわけたり、それを交ぜて稗餅についていた女衆の間から、あわてて久子だけが抜けて寺房の厨へ隠れた。その久子も、ほかの侍女たち同様、百姓女房そのままな姿に見えた。

久子は、うす暗い厨のすみへ駈け込むと、いそいで裳を下ろし、たすきを外し、肩や袂のチリを払ッていた。

外では、多聞丸が、

「お母あさま、早く来て」

と、小さい地だんだを見せながら言っている。

「もう、服部の小父さまが連れて、あちらまで来てますよ。何してるの、お母あさまは」

「すぐ行きますから」

と、久子はやっと子に答えた。

「多聞は先にあちらへ行って、お父さまに、ごあいさつをしていらっしゃい」

それからも、彼女は、もいちど手を洗ッたり、髪を濡らして、櫛など入れ、なお小部屋の蔭では、紅、白粉をさっと顔につかっていた。

籠城も百日余である。武者はもとより女子供も、骨と皮ばかりな“餓鬼ノ館”となっている。それだけになお彼女は自分の中の“女性”を久しぶりの良人へは浅ましいものに見せたくない。少なくも女の匂いを失わず、ほほ笑みを持って、迎えようとするのらしい。

さっきから、爺の左近や、服部治郎左が、