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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

そして着のみ着のまま子を抱いて寝るクタクタなつかの間には良人の夢さえ、夢が忘れてしまったようだった。

――が、その良人がいま、はからずこれへ来たと聞くと、彼女は新妻のようなほてりを体におぼえた。なお、それにもまして、良人が自分たち妻子へ姿をみせに来たことの裏には何か「……今生のこともこれきりだぞ」としているものがありそうな気がして、恐いそぞろな予感に、わけもなく胸をしめつけられもするのであった。

彼女はやっと起った。

走り出してもゆくべきを、なぜか恐ろしかったのだ。そして濡れ縁を曲がってゆくと、すぐ良人の姿が眼に入った。多聞や三郎丸を抱きよせて、正成はまだ外に立っていたのである。

たまたま会った父の手には、子供の身にもたまらない厚みと親しみと、そして頼もしさをも感じるらしい。

「お父さま」

ただそう呼べるだけでもうれしいのか、多聞丸も三郎丸も、正成の手をつかまえて離さなかった。その手を自分の頬へ当ててみたり、肩へぶら下がったり、親鶏を途方に暮れさせている姿なのである。

遠くにひざまずいていた爺の恩智左近、南江正忠、ほかの兵らも、しゅんと、眼を熱くした。