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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
火焔玉はなかなか燃えつきない。その火が、あたりの灌木を焼いて、鬼火地獄の観を呈しているのでもある。
もう絶壁の肌に、うごめく兵影は見あたらなかった。でも折々には大石の地ひびきが崖から奈落をゆすッてくる。谷が埋まるほど、石が積まれ、兵の死骸が、その間にはさまっていた。雲がいよいよ低く垂れ、どっぷりと夜が濡れてゆく。――やっと、そのころになって、諸所の陣から退き鉦がひびいていたが、ほとんど、東国勢はすでにどこかへ散ったあとだった。そして、うごけない手負いか死者のほかはない寂とした死谷の闇に、やがて白い冷たい雨が降って来た。
雨は四、五日降りつづいた。
その間、火箭防ぎの心配はない。しかし城兵は休めなかった。次に備えて石やら大木を補充しておく労働がある。また埋め樋を修理して城中数十の貯水槽に、生命の水を蓄めこんでおく急務もあった。しかも彼らの筋肉は渋皮みたいに営養を失っていた。
「了現、あと幾日の糧をのこしておるか」
「十日とて保てませぬ」
「いや、木の芽や草もある」
それを思うと正成は胸が痛む。隠岐のみかどの脱島を知っていらい、城兵は新しい勇気をもち直していたが、それにせよ限界がみえる。