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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

「む、ぜひがない」

源五はこらえているつもりだが、語気は充分にもう感情と威圧であった。

「兵に命じて、しょッ引かせよう。老人にいたい目はさせたくないと思ったが」

「まあ待て。そこまでの思慮があるなら、もう一考したらどうだ」

「一考の余地はあるまい」

「ないことはない」

「では神妙にまいると申すか」

「いや、さほどわしに会いたくば、いくさ奉行の長崎自身、ここへ足を運んで来るのが、いちばん話が早分りじゃろう。長崎に来いと申せ」

「ば、ばかな」

「何ンでかね?」

「たわ言もほどにしろ」

足立源五は、もう、がまんのならない顔で、そこの縁から表の兵へ、

「者どもっ、この老いぼれめを引き出して、馬の背にひッくくれ」

と、どなった。

土足の兵がこみ入ッてきた。が、時親はその老い骨を猫背に一そうぺしゃんと腰をすえて、琥珀色のひとみでキラキラ見ているだけだった。

「うぬ、まだ立たんな」

源五は、火になって。

「世にうとい老学者と、手加減をみせておけばよい気になりおる。それっ、ひきずり出せ。この食わせ者を」

「源五、そこらの兵どもも、下にいろ。あとで後悔せぬがいいぞ」

「なにを、白々と」

「逆上するな。