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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

「恐れんでもいい」

「ようございますか」

「だが番作」

「へえ」

「隠者と呼んだり、時親さまといったりする口癖は気をつけろ。……吐雲斎と呼べ、吐雲斎と。よろしいか」

これまでの訊問にも、彼は医師の吐雲斎で通って来たのである。どこの屯でも、その風貌からみて、彼を医師に非ずと見破った者はない。

道は、狭山ノ池のくびりで半田の部落をのぞいている。そこの木戸でも、おなじ偽称で難なく通りぬけた。

ところが、しばらく行くと、宙を飛んで追ッかけて来た武者がある。さっと牛の前へ廻って、正視してから、こう言った。

「これは加賀田の老先生、どちらへおいでになりますか」

「ちがう」

時親は顔を振った。

「わしは吐雲斎と申すもの」

「吐雲斎? それは御書斎のお名でしょう」

「はははは、そこまで知られていたんでは、しかたがないな」

「主人と共に、二度ほど山居へお伺いしたことがありまする」

「ご主人とは」

「石川殿で」

「お。散所ノ太夫か」

「近くに御陣しておられます。ぜひお呼びしてもどれとのこと。おいそぎでなくば」

「いや、急ぐのだが」

「でも、まげて、ご休息でも」

「そうするか?」

あまり逃げ腰なのもいい智恵ではない。