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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
いったい何者だったのだろう。
恐い、と思いだしたら居たたまれぬようなものがある。ここは名からして羅刹谷であり、多くの死者が眠っている鳥部野もほど近い。
すぐる年には、足利高氏の一勢が、しばらく住んでいたことのある古館だが、それは武者大勢してのことだった。いまは母一人、子一人ぼっち。
でも覚一は、ここが気に入っていた。――ついこの間までいた小松谷の探題北条仲時の邸よりは、山静かだし、武者出入りもなし、何よりはまた、琵琶を弾くにも歌うにも、たれに気がねもいらないのが好ましく、
「いつまで居たい」
と、いっているほどなのだ。
これも先月の赤松勢の洛内乱入のせいだった。――新帝以下、すべて六波羅へ疎開され、そのおびただしい方々のお住居には、探題邸をも明けねばならないことであった。――草心尼母子が他へ移されたのもそのためで、またそれほど都のまもりがいまは危険にひんして来たことでもあった。
「おやっ。か、覚一」
「どうしましたお母あさん」
「なんであろ。また松明のあかりが彼方から見えてくる」
「え。こちらへ向って」
「おお、大勢で」
怪しむまもなく、たちまち六波羅兵の十数人が、手の松明をかざして、欄の下に近づき、