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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

こう聞くと右馬介はかえって安心した容子であった。彼女の無事さえ知れば用は足りていたのである。

がしかし、多少の不安が滲まぬでもない。いまは佐々木道誉が都にいないからいいようなものの、何しろ彼女の美貌は人目につく。それに疎開生活の世間というものは一ばい人の心もすさんでいる。女の外出などはくれぐれ気をつけねば物騒である。――と、いうような四方山ばなしなどのすえ、しばらくは小右京の帰宅を待っていたが、

「いや、お目にかからずとも、ご無事とさえ分ればよいこと。おもどりになったらよろしくおつたえおき下さい。いずれまたすぐ、上洛のときは、さっそくお目にかかりますれば」

と、言いのこして、まもなく彼の姿は、先を急ぐように、御室道をひがしへ、足の迅い一個の旅人となっていた。

彼の旅は寸陰のまも惜しんで、ほどなく海道の名古屋、岡崎から幡豆郡へはいり、故郷三河の一色村へついていた。

あらためていうまでもなく、この地方は足利家の支族のものが古くから郷主として、また開拓者として、根をおろしてきた村々だった。吉良、今川、仁木、乙川、西尾の諸党、みなそれである。わけて一色党の一色刑部はなかでも重きをなしていた。