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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
「…………」
父とはどんな人か。彼の童心にもそれは異常な好奇心とも恐さともつかないものを抱かせていた。なつかしさといっては何も知らないのである。顔も見ていず、ただ自分にも父はあると、かねがね聞かされていただけなのだ。
だから子の彼よりは、今日の機会を待ちに待ったのは、いうまでもなく母藤夜叉なのである。藤夜叉のどこかには死の影すらみえないではない。一心であったし、ことによれば、死まで考えているのではないか。青いほどな唇の臙脂や化粧の翳にはそんな容子もうかがわれる。
「お、刑部が来る」
直義が池のほとりでつぶやいた。
一切は、刑部から直義へはなして、直義のとりなしを力に運ばれていたのであった。直義は同情をこえて、兄の非情に義憤すらおぼえていた。きっと会わせてやる! そう言って励ましていたのである。
刑部の白い眉は明るかった。せかせかとこれへ来て。
「いましがた、殿はお目ざめでおざる。そして、かような御意でおざった」
と、高氏の言そのままを、直義へつたえた。
「――すぐ会おう、右馬介なら待ちかねていた、久しぶりな右馬介よと、ありがたい仰せにござりまする」
「藤夜叉のことは」