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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

藤夜叉の烈しいこらえ泣きであったのだ。直義はふりむいて見るにもたえない。背でそれを感じていた。と思うまに、後ろの咽びは、咽び声のままでさけんでいた。

「あ、ありがとうございまする! ……。うれしゅうございます! ……。わ、わ子様さえ、じつの父御のお膝へおわたしすれば、藤夜叉は、この藤夜叉などは、もう、どうなってもいといません。和子っ、そなたの父御は、あの高氏さま。さ、高氏さまのおそばへいらっしゃい。もう母はお目にかかりませぬ」

押しやられたのか、不知哉丸もまたそこでわっと泣いた。その子をおいて、狂おしげな姿は、その悲泣を袂につつんだまま、さッと、廊をどこへともなく走り去った。

「藤夜叉どの。藤夜叉どの」

捨ててはおけず、右馬介はすぐ起って、彼女を追った。

暗い所へまろび入るなり、藤夜叉は体じゅうで泣いた。泣くによい小部屋であった。

つーんと、あたまのしんが、冷たいうつろになったとき、もう涙もなく、平易な行為のように指は帯のあいだをまさぐっていた。塗りの懐剣なのである。唇に仏のみ名も出なかった。

「あっ、なにを」

そのとき、おどり込んできた人の声に、彼女の手は急いだが、