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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

「ばかな」

とばかり、右馬介の手にもぎ取られていた。そしてその短い白刃が、自分から届かぬ所へ投げやられた音を聞くと、

「なぜ止めるんです!」

藤夜叉は、食ってかかるような形相をふりみだした。

「死なしてください。いいえ、そなたこそは、殿と私とのこうなった初めのことから、今日までのこと、何もかも知りつくしているくせに」

「ま、おしずまりなされ。死んでは何もありませぬ」

「何もない、だからこそ私は死にたい。……そなたは一体、私のこんな苦しみをいつまで見ていようとする気かえ」

「めッそうもない」

「でも、そうではないか。時節を時節をと、そなたがいうにまかせて今日までも」

「まったく、ようお忍びくださいました。けれど、ここ十年の足利家は、じつに危ない中にあったのです。殿のお立場のむずかしさは、なかなか、女性にはお分りにもなりますまいが」

「嘘、嘘、嘘。いまとなれば、私はそなたにていよく騙されていただけのこと。殿にとっては、そなたは無二の忠義者でも、私には恨めしいお人でしかない。その上、なお私を生かして、なにをおもしろがろうとするぞえ」

「おもしろがる? ……。情けない、ああ、そのお口走りは、どうかしていらっしゃる」