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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
「おう、よい折へ」
みな目礼で直義を迎えた。
野評定だから上座もなにもない。直義は輪の中へ割って入って無造作にあぐらをくみ、急に押し黙った面々を見まわして、
「揉めているのか」
と彼から、訊ねた。
「さればで」
刑部が受けて、深刻そうに、
「ちと難しく相なッておりまする。まず誰か、事のいきさつを、ご舎弟へおはなし申し上げないか」
と、他へうながした。
仁木義勝が説明にあたって出た。――そのいうところをきけば、こうである。
三河党としては、若ぎみのお身は、なんとあろうと、渡しかねる。断じて鎌倉へは差出さぬ。
すでに、庶子の竹若君から、ご実子の千寿王さままで、幕府の質子に取られていること。今となれば、ここの不知哉丸さまは、取っておきの一ト粒だねだ。おめおめ渡してたまろうか。殿のお立場にしろ、鎌倉の内なら知らず、もう上洛途上の野ッ原である。執権との一約などに、しばられている必要はない。
「使者などは追ッ返せ」
「いや斬ってしまえ」
これがこの宵からの、輿論だった。そして三河者の血気な一団は、言いあわせて、不知哉丸の身を他へ隠すなどの騒ぎを生んでいたのである。
柳堂の高氏も、おそらくこれには困惑したろう。