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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

ところへ。

召次から思いがけぬ来客の告げがあった。道誉が、

「ほう、いつ来ておったか。それやめずらしい、通せ通せ」

といった口ぶりにも、よほどな好意をもつ者にちがいなかった。

まだ頭の繃帯もとれていず、正月の客もみなことわっていたのである。そこへ通されて来たのは、一見、遠来の武者だった。まずあいさつ、以後のぶさたの詫びなどあって、客は言った。

「一昨日、ご府内に着き、昨一日は、柳営の問注所でございました。いやどうも、えらくおきびしいご質問やお調べでして」

それは隠岐ノ判官佐々木清高なのだった。何事か、幕府の召しによって、遠い島から急いで来たのらしい。

隠岐ノ判官佐々木清高は、佐々木党の一支族で、いうまでもなく、道誉は宗家佐々木であった。

で、先年の先帝島送りのさいには、清高は島から出雲の美保ヶ関までお身柄を受けとりに来ていた。そして道誉から親しく引き継ぎをうけ、また何かと帝のおとりあつかいや将来についても、ひそかな密語を交わして別れた仲だ。

それだけに、道誉は、

「なに、召しをうけて?」

と、どきとした色で。

「では、きのう一日、問注所にて、配所のお扱いにつき、おぬしは、そんなにもきびしい取調べを食ったのか」