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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

「もう、ご猶予はなりません。時を過ごさば、ふたたび巡ってくる機会は、果てなく遠くになるでしょう」

頼源の暗文は、それのおすすめが眼目となっていた。いや暗文はもっと具体的だった。帝の島脱けのご決意を、早急にうながすと共に、こう告げている。

時期は、月のすえ。

閏二月二十四日から五日へかけての、月もない海上を、ご脱出の事――。

その宵から夜半までに、配所の西方、知夫の港までおわたりあれば、海上には岩松の海賊船もお迎えに出ているはず。万端、ご懸念はご無用、と予定まで立っている。

「今日は早や十七日」

帝は俄に身のまわりを見まわされた。事はまったく急だった。

一日おいて。

つまり十九日の昼。

丘の下へ水汲みに行った童僕の金若が、水屋から這い上がって、帝のお机の間をうかがっていた。

「みかど……。磯の上でいま、こんな物を、みかどへお渡ししてくれとたのまれました」

「たれから」

「知らない人です」

「何か? それは」

竹の水筒である。金若は帝がお手に取ったのを見ると、後ろの板敷きへ、あとずさった。

その中からは密書が出てきた。帝は読むとすぐ細かに裂いて、

「金若、竈に残り火があるか」