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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁
「お嬢さんも出かけたのかい」
「ヘエ――、梶さんがお出かけになって間もなく、変な男が表の戸を叩いて手紙を投り込んで行きました」
「確かに男だね」
「間違いはありません。太い作り声で――、するとお嬢さんがソワソワしておりましたが、急に思い立ってお出かけになりました」
「たった一人で?」
「私もついて行こうと思いましたが、ツイ近所だし、家の方が用心が悪いからと、留守番をしてくれるように――とたっておっしゃるんです」
荒物屋の女房は、少しばかり責任を感じている様子です。
「どこへ行くとも言わなかったのか」
「くり返して訊きましたが、教えてくれません」
「若い娘のことだから、出かける前に念入りに化粧をするとか着物を換えるとか、だいぶ手間取ったことだろうな」
平次の問は含蓄の多いものでした。
「いえ、ちょいと帯を直しただけ、なんにもなさいません。平常から綺麗すぎるほど綺麗なお嬢さんで、お化粧も極く手軽な方でしたが――」
「お神さんは、その帰りを朝まで待っていたのかい」
「まさかこんな事とは知りません。若くて綺麗な方ですから、いずれいろいろの事がおありだろうと思って、ツイ待つともなく、寝込んでしまいました」