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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁

青空文庫

四

黒木長者の土蔵、――樫と栗とで腰張りをして、その上を海鼠に塗り上げた、金庫のような土蔵を切り破って、千両箱を三つ盗み出したのですから、これは尋常一様の盗人でないことは明らかです。それを見ると、慾で固めたような黒木長者は、

「ワーッ、大変ッ」

一ぺんに目を廻してしまいました。

四

何か変ったことがあったら――と、この盗難を予期するともなく、ガラッ八を付けておいた平次、その日の朝のうちに一埒を聞込んでしまいました。

「それみろ、言わないこっちゃない」

「親分は見透しだ、全く恐れ入ったよ。何しろ黒木長者は眼を廻す騒ぎだから、屋敷の中は煮えこぼれそうだ。巣鴨の兄弟分、牛屋の喜平のところへ泊り込んで、これだけの事を聞くと、飛込んで一と当り調べようかと思ったが、下手をすると取り返しが付かねえから、とりあえず飛んで帰って親分のお耳へ入れたわけなんだ」

「そいつは上出来だ、そう言っちゃ悪いが、自分のあまり賢くねえことを、よく知り抜いているところが、手前の取柄さ」

「チェッ、骨を折ってからかわれりゃ、世話アねえ」

「まア怒るな八、どりゃ出かけよう」

二挺の駕籠、江戸の霜街を踏んで、一文字に巣鴨へ飛びました。